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冠危険因子

高血圧

Q1:高血圧は心血管系にどのような悪影響を及ぼすかご存知ですか?

Q2:高血圧症にて生命を短くしないための適正な血圧と降圧薬はご存知ですか?

A:高血圧症の悪影響の一つは、動脈硬化を促進させることであり、もう一つは左室肥大の原因となることです。動脈硬化についてはこれまで沢山述べてきました。左室肥大も生命予後を悪化させます。 高血圧が数年(5年以上)放置されると、左室の心筋は左室腔内に肥厚し左室の内腔は狭くなります。この時期の左室は上手の胸部写真のように心臓の外形は大きくありません。左室の収縮は良好に保たれますが、拡張しにくくなり、登坂などで直ぐに息が切れたり、頻脈になります。また時には狭心症のような胸部圧迫感を自覚する場合もあります。

高血圧性左室肥大

更に降圧療法を受けないか、不十分な降圧療法しか受けていない状態が10年以上続くと、左室の心筋の間に繊維組織が増生し、心筋の収縮力が低下するため、少しの収縮で必要な心拍出量を確保しようとして、左室は肥厚したまま拡張します。その結果胸部写真では心陰影が大きくなります。

左室の心筋肥厚+左室収縮不全

現在70歳代後半以降の方の心不全の大半は、この高血圧生左室肥大の成れの果ての左室収縮不全なのです。
虚血性心疾患の発症を予防し人生の終盤で慢性心不全に陥らないようにするための至適降圧目標値は下の通りです。

至適降圧目標値

そして動脈硬化の進行を予防し糖尿病の新規発症を抑制する薬の分類を以下に示します。

薬の分類

また高血圧症の方は、医療機関で血圧を測るだけでなく、必ず自宅血圧を毎日測定して下さい。その理由は、医師や看護師に血圧を測られると7割ほどの方は自宅より高い値を呈します。これを白衣高血圧と言いますが、医療機関で測定する血圧は緊張したときの血圧を見ていると思って下さい。医療機関の血圧を指標に降圧薬を決めると自宅では血圧が下がりすぎることになります。ですから自宅血圧の測定が重要なのです。
1日の中で1番高い血圧と一番低い血圧を測定するのですが、血圧の日内変動は図のように、リラックスしたり緊張したりで1日の中で大きく上下変動します。こんなに変動する血圧では、いつ測定したらよいのでしょうか?
実はそんなに難しいことではありません。我々には生体リズムがあり、朝目が覚める2時間程前から、血圧、脈拍、体温が徐々に上昇し、あるところに達すると目が覚めるようになっています。ですから起床時が概ね一番高い血圧になります。但し起床時は膀胱が満杯になっていますので、トイレに行くのを我慢して血圧を測ると更に上昇することになります。したがいまして、起床後排尿後の血圧を測定して1日の中で1番高い血圧としていただければ結構です。そして起きている時間帯では寝る直前が概ね一番低い値になります。
また血圧は、日差変動と言って同じ朝起床後の血圧でも日によって変動します。ですから血圧の値に一喜一憂してはいけません。 1ヶ月ほど継続して記録すると、朝の収縮期の血圧の変動幅が見えてきます。
その変動幅が至適血圧の目標値以下になっていれば良いし、なってなければ更に降圧薬を強化することになります。

悪玉コレステロール

Q1:コレステロールとLDL-コレステロールの違いはご存知ですか?

Q2: 虚血性心疾患の再発抑制にLDL-Cをどこまで下げるべきかご存知ですか?

A:コレステロールには、LDL-コレステロール(LDL-C)とHDL-コレステロール(HDL-C)があります。
動脈硬化を進行させるのはLDL-Cで、いわゆる悪玉コレステロールです。HDL-Cは動脈硬化の進行を抑制する作用があり、いわゆる善玉コレステロールです。
コレステロールは我々の体を構成する60兆個の細胞の膜の構成成分であり、また生存に必須のステロイドホルモンの原料です。したがって、コレステロールは人間が生存していく上で必須の成分で、1日2000mgを必要とします。体のほとんど全ての細胞はコレステロールを合成する能力を持っており、体内のコレステロールの3分の2は体内で合成されており、経口摂取されるのは3分の1です。
LDL-Cはコレステロールの合成に必要な材料ですが、材料が多すぎて血管壁内に浸入すると動脈硬化を進行させることになるわけです。

コレステロールの割合図

虚血性心疾患の再発予防には、血管内皮細胞の障害を改善し内皮細胞の機能を強化する作用を持ったLDL-C低下薬が有効であり、現在最も有効な薬はスタチンです。
日本動脈硬化学会は2007年に、脂質異状症の管理目標ガイドラインを発表しました。それによれば、冠動脈疾患の再発抑制(二次予防)にはLDL-Cを100mg/dl以下にすることが提唱されています。

しかし、欧米では薬物溶出型ステントを用いて動脈硬化病変を拡張した部位では、既にできている動脈硬化を退縮させるまでLDL-Cを下げることが推奨されています。
日本のデータでも、LDL-Cを70mg/dl以下、またはLDL-C低下率を49%以上にすると動脈硬化が退縮することが報告されました。

プラーク退縮に必用な値と低下率

また欧米からは、LDL-Cが87.5mg/dl以下の場合、LDL-CとHDL-Cの比が2.0未満では、既存の動脈硬化が進行せず、1.5未満になると既存の動脈効果が退縮すると報告されました。

PCIの専門医の間では、LDL-C<70mg/dlかLDL-C/HDL-C<1.5を再発抑制のためのコントロール目標とする考え方が主流となりつつあります。

脂質改善とプラーク退縮の関係

糖尿病

Q1:虚血性心疾患の再発予防に糖尿病の適切な管理が重要であることをご存知ですか?

Q2:動脈硬化の進行抑制を目的とした抗糖尿病治療を受けられていますか?

A:糖尿病はすさまじい勢いで増加しています。

糖尿病患者数の推移

1990年以前は、膵臓からインスリンが分泌されなくなって糖尿病を発症すると考えられていました。したがいまして、最初に開発された糖尿病治療薬はインスリン分泌薬でした。
しかし1990年以降、糖尿病の病態が解明されました。
糖尿病は、肥満や高血圧、脂質異常症によって体内にインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)を生じ、通常量のインスリンでは効果が得られなくなり、大量のインスリンが分泌される様になります。この状態が続くと、正常では食後に血糖が上昇すると直ぐにインスリンが分泌されたのが、インスリンの分泌レスポンスが遅れるようになり、食後高血糖を生じるようになります。しかし遅れてインスリンが大量に分泌されるため、食後2時間血糖は200mg/dl以下となります。
この時期を、以前は境界型糖尿病と言っていましたが、現在は耐糖能異常と言います。
食後2時間血糖が200mg/dlを超えると糖尿病と判定されますが、糖尿病の中期頃までは、総インスリン分泌量は減少しておらず、寧ろ多量に分泌されています。
この食後高血糖と、高インスリン血症の両方が血管内皮を傷害し、内皮機能を低下させ、動脈硬化を進行させます。

耐糖能異常と動脈硬化の進展

虚血性心疾患を発症する時期の糖尿病患者は、沢山のインスリンが分泌されている時期なのです。この時期の糖尿病治療のポイントは、食後高血糖と高インスリン血症を改善し、動脈硬化の進行を抑制することですので、インスリンが大量に分泌されている時期にはインスリン分泌薬を服用すべきではなく、インスリン抵抗性を改善する薬を服用すべきです。

インスリン分泌パターンと血糖推移

虚血性心疾患を合併した糖尿病患者の治療チャートを以下に示します。

糖尿病患者の治療チャート

基礎疾患に糖尿病がある虚血性心疾患の患者さんは、動脈硬化の進行抑制を基本方針とする糖尿病専門医か、上記方針で糖尿病治療を行うことのできる循環器専門医にかかることをお勧めします。

メタボリック症候群

Q:メタボリック症候群をご存知ですか?

A:虚血性心疾患の危険因子には以下のようなものがあります。
虚血性心疾患にかからないために、またすでにかかってしまっている人はこれ以上病気を進行させないで病気と上手に付き合うためにも、可能な限り危険因子を取り除くことが大切です。

メタボリック症候群

これらの危険因子が2つ、3つと重なるほど危険度が増していきます。
厚生労働省の平成16年国民健康・栄養調査により、40~74歳において、男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリックシンドロームか、その予備群であることが報告されました。 あなたはどうですか?
メタボリックシンドロームの原因となる内臓脂肪の蓄積は、動脈硬化や動脈硬化につながる生活習慣病を引き起こします。ですから、メタボリックシンドロームの段階で予防することが重要です。メタボリックシンドロームの予防は、まず、よく知ることからはじめましょう。

動脈硬化の危険因子と虚血性心疾患の危険性

あなたは大丈夫?

メタボリック症候群の診断基準
【高血圧】

高血圧の人は、動脈壁に絶えず高い圧力がかかるため内膜が傷つきます。傷ついては治り、傷ついては治りを繰返すことにより、 その部分に脂肪がたまりやすくなります。

【コレステロール】
血管

血中のコレステロールが高いことは、動脈硬化の最大の危険因子です。 LDL(悪玉)コレステロールが血管内膜に過剰に蓄積し、酸化され、粥腫(アテローム)を発生させます。 アテロームとは、血管壁の中に脂肪物質がたまって厚くなり「おかゆ」のような状態になったものです。 このアテロームが次第に厚くなって血栓ができ、血管をふさいでしまうのです。

【糖尿病】

中性脂肪や、コレステロールの血液中の値が高い人が多く、動脈硬化を予防するHDL(善玉)コレステロールの減少も起こすことがあります。 また血糖値が高いために、血液の粘度が高く、血栓を生じやすいことなど、様々な因子を含んでいる怖い病気です。

【喫煙】
タバコ

ニコチンが血小板を凝集させ、動脈の中膜を増殖させたり、血管壁に血液中の脂肪が沈着しやすくなることや、HDL(善玉)コレステロール値を低下させること、血液の粘調度を高めかたまりやすくなること、更に血管を収縮させ脈拍数を増やしたり、血圧を上昇させることなどがあります。

【ストレス・性格】

ストレスが続くと動脈硬化の危険因子となる高血圧症や、高脂血症、糖尿病を誘発する恐れがあります。 また血液が固まりやすくなり、血栓が出来やすくなります。また攻撃性の強い性格の人などは、 穏和な性格の人に比べストレスを受けやすく、血圧が上がり、糖尿病、高脂血症などを悪化させます。 更に狭心症の発生率も穏和な人に比べ7倍高いと言われています。

【運動不足】

運動不足が続くと、血液中の中性脂肪の値が高くなり、動脈硬化を予防するHDLコレステロールの値が低くなるほか 、肥満を助長し、動脈硬化を発生、進行させます。

【アルコール・砂糖】

日本酒にして1日1合程度の晩酌であれば、HDL(善玉)コレステロールの値を高めますが、 多量の飲酒は中性脂肪の値を高め、脳卒中の発生率も高くなります。 また砂糖においても、1日30g以上摂取すると、中性脂肪が高くなります。

危険因子の治療

危険因子の治療
  1. 食事療法
    標準体重を保ちましょう。
    標準体重=身長(m)×身長(m)×22
    摂取カロリー量=標準体重×(25~30)kcal
    アルコール減量:酒(1合)、ビール(大1本)、ウイスキー(シングル3杯)以内。
  2. 運動療法
    • 速度:80~100m/分、100~130歩・分(万歩計)
    • 距離:3km/日(1日30~40分)、20km/週
    • 運動量の増量:1日10分から始め、2~3日毎に10分ずつ増加し、10~20週かけて目標値に達する。
    • 運動中の心拍数が120/分を越えないようにする。
  3. 薬物療法
    食事・運動療法を行っても危険因子のコントロールができない方は、医師に相談して適切な薬物療法を行いましょう。薬を飲み始めて数値が良くなったからといって中断してしまうと再度コントロールが悪化する可能性があります。自分で判断するのはやめましょう。
  4. 禁煙
    タバコは量が増えれば増えるほど危険度が増していきます。禁煙が重要です。受動喫煙(周囲の人の喫煙)でも同じように危険性が上がることが示されています。
喫煙グラフ

食事と運動

食事と運動

ゴルフワンラウンドしてビール中ジョッキ2杯飲むとカロリー的には同じということになりますね。

1食の塩分は3g以下を目標として、1gからの減塩を目標にしましょう。まず簡単にできるのは、汁ものの汁を残すことを心がけましょう。ラーメンなど麺類の汁は1/3は残しましょう。
味噌汁(1杯には塩分約2g)も、具は食べても汁は残しましょう。
漬物はできるだけ残しましょう。
料理の味をみてからしょうゆ等の調味料を使用しましょう。
しょうゆ(小さじ1杯は塩分1g)やソースなどをかける料理はできるだけ料理にかけず、小皿にとって表面だけ味をつけるようにしましょう(つけ食べ)。
ご飯全体に味のついているもの、「どんぶりもの」や「すし」などは塩分が多いので注意が必要です。

比較的塩分の多い外食
コレステロール

日本人は一般に食事としてコレステロール300~500mg/日を摂取していると言われています。コレステロールが多い食品はとりすぎないようにしましょう。目標:コレステロール摂取量を300mg/日以下にする。

コレステロールが多い食品と少ない食品

喫煙

Q:喫煙が動脈硬化を進行させることをご存知ですか?

A: タバコは肺ガンとの関係で問題にされていますが、それよりも25年ほど早く、1950年代から動脈硬化を増悪させることが指摘されていました。
タバコの煙に含まれる一酸化炭素(CO)が吸収され、血液中に溶け込み、これが血管の内皮細胞を傷害し、内皮機能を低下させる事により、動脈硬化を進行させます。
日本の壮年期男性の虚血性心疾患発症に関与する危険因子を調べたデータによりますと、喫煙が最も虚血性心疾患の発症に相関が強いことが分かりました。

壮年期男性の虚血性心疾患発症に関与する危険因子

もう一つのタバコの問題は、受動喫煙です。
ギリシャのデータですが、30年間受動喫煙に曝露されている人は、非曝露者より2倍、40年の曝露で非曝露者より3倍多く急性冠症候群を発症することが示されました。
喫煙者は、周囲の人に虚血性心疾患にかからせる危害を加えているとの認識を持っていただきたいと思います。

受動喫煙に曝露されている人が急性冠症候群を発症するリスクのオッズ比

日本のデータですが、非喫煙者と比べ、喫煙習慣者は全ての死因、虚血性心疾患、全てのガン、肺ガンで危険率が高いことが分かります。

一方、喫煙者も5年ほど禁煙すれば、生命の危険が減少することが分かります。
禁煙に遅すぎると言うことはありません。

少し古いデータですが、各国の喫煙率の推移を一覧表示したものです。
日本人の男性は右肩下がりですが、諸外国と比べると相当高い喫煙率であることが分かります。
また日本人の女性は喫煙率としては低いのですが、ほぼ横ばいで減少傾向が見られないことが問題です。
以前は、禁煙は意志の問題と考えられていましたが、今はニコチン依存症という病気であるから治療で治すという考え方になり、新しい禁煙薬も開発され、実用化されています。

各国の喫煙率の推移

喫煙は本人と周囲の人の健康を損ね、医療費を増大させ、誠に百害あって一利無しです。
禁煙を思い立ったら禁煙の治療を受けましょう。

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